Home > IVY Social School >Volume 1 [Part1]


質問者(社会人):現場に入るお2人でしたら感じると思うのですが、現場によってその地域性がありますよね。その地域性を変えてしまうかもしれない活動を、お2人はあちこちで行っていらっしゃると思うんですね。

 

例えば、バングラデシュの女性たちの暮らしを変えて行くときに、彼女たちが大事にしている社会習慣や風習を変えてしまうかもれない。カンボジアで様々な支援をするときに、これはカンボジアの社会に本当に良いのだろうかとか。おそらくお考えになったことがあるんじゃないかと思います。その辺りについてお考えを聞かせて頂けますか?

 

安達:難しい、しかし良い質問だと思います。

 

私が今までやってきたことで言えば、不公平については変えても良いだろうと思っているんですね。たとえば、カンボジアの場合、男女差別が激しくて、女性が家の外に出ることが出来ない、自立して経済活動が出来ない、学校に行けない。こういう地域性については変えても良いのではないか、と考えています。人間として普遍的な、権利や価値観のような部分については、外部から介入しても良いのではないかと思っています。

 

震災の場合でも、三陸はこれまであまり外から人が入って来なかった地域です。過疎化で人口が減っているような地方というのは、地元の人たちでは解決出来ないようないろいろな問題があったと思います。カンボジアの農村もそうなのですが、外の刺激が入ってこないと、イノベーションが起こらないということがあります。そのままだと、そこにある問題が,ずっと固定してしまうということがある。

 

震災があって、外の空気が入ってきて、それが良いものか悪いものかはわからないけど、地元の人たちに刺激を与えたと思います。その刺激がイノベーションを起こすきっかけになる。そこに住んでいる若い層が,そう思ってくれたらいいなと思うのですが。

 

シェルバ:バングラデシュでのソーシャルビジネスについて言えば、服の習慣には一番配慮しなければいけないと思っています。いきなりデニムを着てくださいというようなことはしないです。商品構成も日本と全然違って、7割が男性もの、2割が子供で、1割が女性ものです。地域性はやはり加味しないと、受け入れられないし歓迎されないということは大前提として考えています。

 

現地では女性の9割以上がサリーを着ていて、この文化は壊してはいけない。なので、女性もの商品については、下着しか扱っていません。バングラデシュにはサリーの産業がしっかりあって、有名な産地があったりだとかするので、そこには入っていかない。

 

一方で、女性の下着に関しては、女性の生理用ナプキンなのですが、今は粗末な布や新聞紙を使っていたりするので、そういう部分は変えた方が良いと思いますし、変えなければいけないところだと思っています。

 

質問者(NPO):フードバンクという活動をやっているものです。安達さんに、ドナーへの報告に関して,企業との連携という点でさらにお話しを伺いたいです。

 

安達:実はユニクロとのプロジェクトでは,大した報告はしていません。細かな報告をせずとも、現場に直接来て見てくれるので、それで現状把握をしてもらえる。ドナーが実際に現場を見て、問題を肌で感じるのが一番だと思います。シェルバさんも、ご自分の目で見たものしか信じていないのではないでしょうか。いくら分厚い報告書を体裁よく整えても、伝わらない部分があるので、ドナーに視察してもらうのは大事だと感じています。

 

もう一つ重要なのは、明確な目標値を立てることです。どのような状態をプロジェクトの成功とみなすのか、その指標と目標値を定めておく。例えばキャッシュ・フォー・ワークでは、「雇用した人の半数以上が再就職する」というのを目標値として定めました。この目標値設定が正解かどうかは別として、明確なゴールを決めてそこに向かって活動を行ない、その達成度を定期的に測っていく。そのような「わかりやすさ」はドナーへの報告においても役立ちます。

 

質問者(同上):シェルバさんにもお伺いしたいのですが、私たちは,他のNPO・NGOと連携して東北の被災地で就労支援をしています。

今、「中間就労」という支援の形を考えています。通常の就労をする前の段階として、たとえば2時間だけインターンのように仕事をしたり、軽作業しかできない人に仕事を切り分けてやってもらったり、というものです。ユニクロにこういった取り組みに関与してもらうことは可能でしょうか、差支えない範囲で教えてください。

 

シェルバ:我々の仮設店舗では被災者の方を雇用しており、それをインターンのような形態でやるのは十分可能性があると思います。被災地支援とは別な話ですが、私たちはずっと難民問題への取り組みについても支援活動をしてきました。日本にも難民の方はいらっしゃって、特にミャンマーからの難民が多い。こうした方へのインターシップのプログラムはすでにやっていて、これはまさに中間就労的なものだと思います。同じような枠組みであれば、出来るのではないかと思ました。

 

堀野:最後に、お仕事のやりがいについてシェルバさんに伺いたいと思います。これから社会に出ていく学生たちも多く集まっていますので、何かメッセージをいただけるでしょうか。

 

シェルバ:最近、新卒学生の面接をする機会も多く、CSR部に入りたいと言ってくれる人たちもいます。CSRという分野が非常に魅力的に映っている、そういう世の中になってきているのを感じます。

 

では私の学生時代はどうだったかというと、ボランティアにも社会貢献にも縁もゆかりもなかった。アルバイトに明け暮れて、キャンペーンガールをやっていただけ。

 

GAPで働き始めて、その後ユニクロに転職し、はじめは人事部で研修を担当していたんです。ところが新しい物好きに見えたようで、当時は始まったばかりの社会貢献をやらせてみてはどうだということで、2001年に社会貢献室の担当になりました。自分からやりたくてやったのではないんですね。当時は2人しかいないチーム。その頃は、自分が今のように世界を飛び回ったりするとは思いもしませんでした。

 

ユニクロでは「チェンジorダイ」、変化するか死ぬか二つに一つだ、とよく言うのですが、新しい世界を築いていくには、自分自身もどんどん変革していかないといけない。そう思って、働いています。

 

ゆくゆくはCSRという部門がなくても、会社が社会との接点を持って、社会を良い方向に導いていくという考えを持つ必要があるし、それを全部門で持てるような企業になっていかなければならないと今は考えています。他の企業も同じだと思うのですが、やはり持続可能的に成長するためには、CSRの発想が当たり前にあるビジネスが行われていかなければならないと思うのです。それを達成していくことが,私の次の目標かなと思っています。

 

堀野:ありがとうございました。

 (終)

 

 [ユニクロとIVY 震災支援でのパートナーシップ]

 2011年3月の東日本大震災発生後、ユニクロとIVYは緊密な連携関係を築いてきました。

 ユニクロは、IVYの震災初期に行った物資支援活動から始まり、昨年4月から1年間実施した雇用創出事業「キャッシュ・フォー・ワーク」、そして2012年4月から実施しているローカルパワープロジェクトなどを資金面で支援している他、被災地の現場に定期的にボランティアを派遣するなどしています。

 

(関連ページ)

 >> ユニクロ 復興応援プロジェクト (株式会社ユニクロ 公式HP)

 >> IVY 東日本大震災支援 (認定NPO法人IVY 公式HP)